保護命令制度って?

Q.配偶者から暴力(DV)を振るわれていて、今は別居しております。それでもしつこくつきまとわれて身の危険を感じています。何か身を守る方法はありますか?

A.保護命令制度をご検討ください。

1 保護命令制度って?

保護命令制度は、一定の要件により、暴力を振るう配偶者に対して裁判所が発令するもので、暴力を受けた被害者が、配偶者からさらに暴力を受けることを防止するものです。

2 具体的にどう守ってもらえるの?-保護命令の内容

 ⑴ 接近禁止命令

被害者やそのご実家・お子さんにむやみにつきまとったり、被害者等がいつもいる場所(勤務先や、別居している場合の住居など)に理由もなく近づいたりすることを禁止するものです。

 ⑵ 電話等禁止命令

無言電話、緊急やむを得ない場合を除いての連続又は夜間の電話、FAXやメールなど一定の迷惑行為を禁止するものです。

 ⑶ 退去命令

被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること、その住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。これは、暴力を振るった配偶者に、被害者の居住している場所から一時的に立ち退いてもらうものです。

3 命令に違反した配偶者はどうなるのですか?

保護命令に違反した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
保護命令制度は、暴力を受けた被害者が配偶者からさらに暴力を受けることを防止するものなので、いわゆるストーカー規制法より厳しい規制がされています。

4 誰が申し立てできますか。

被害者ご本人が申立人となります。被害者は、加害者と夫婦関係(事実婚含む)にある場合だけでなく、生活の本拠を共にする交際関係にある場合でも、本制度の保護対象となります。

5 申立ての仕方は?

保護命令の申立ては、管轄(基本的に、被害者の住居地)の地方裁判所に、申立書を提出して行います。裁判所に行けば、誰でも作成しやすい申立書のひな型が備え置かれています。申立ての手数料は1件1,000円(これに加えて郵便切手代がかかります。)です。
ただし、保護命令の申立書には、配偶者暴力相談支援センター等の指定相談機関へ赴いて相談した事実を記載しなければなりません(同センターについては、「DV(配偶者による暴力)」URL: 、「配偶者が近寄らないところに避難したい」URL: にも記載しておりますので、どうぞご覧ください)。

6 申立後の流れ

一般的に、まずは裁判官が、申立人ご本人に面接を行います。
その後1週間ほど経て、今度は相手方の意見を聴取します。もちろん、このとき申立人が出席する必要はありません。
裁判官は、相手方の言い分を確認し、証拠に照らして保護命令を発令するかどうかを決めます。早ければ、相手方の意見を聴取したその日に保護命令が言い渡されることもあります。

7 まずは相談に行きましょう

まずは配偶者暴力相談支援センター等へ相談に行きましょう。上記(5 申立ての仕方は?)の通り、保護命令を申し立てるためにも、センター等への相談は必須となりますし、そもそも申立てを行ってよいかどうかご自身で判断がつかないような場合にも、アドバイスをもらえます。
また、いち早く弁護士に相談するのもよいでしょう。手続の流れや添付すべき証拠の種類・内容など、不安な日々の中では十分に備えられない場合も多くあるかと思います。弁護士は、これらについて分かりやすく説明し、申立書の作成を行い、代理人として活動することが出来ます。さらに、保護命令だけでなく、その他の法的手続(離婚や慰謝料請求など)についても多角的に考えていくことができます。

著者プロフィール

井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属