1 はじめに ―― 養育費の受給状況の実態

養育費について、たとえ離婚前に夫婦で話し合ったり、裁判所の調停・審判を行うことにで、取り決めがきちんとなされていたとしても、いざ離婚してみると、相手が全く養育費を払ってくれない…といった事態は、実際に起こり得ます。

厚生労働省の調査結果をご覧ください。

⑴ 母子世帯の場合

厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より抜粋。以下表も同様。

⑵ 父子世帯の場合

離婚世帯総数のうち、相手から「現在も養育費を受けている」世帯は、母子世帯は24.3%、父子世帯は3.2%と、非常に低い水準です。

離婚時に養育費の取り決めをしている世帯であっても、そのうち、「現在も受けている」のは、母子世帯は53.3%、父子世帯は15.6%です。

母子世帯の半数近く、父子世帯の8割以上が、養育費の取り決めを行ったにもかかわらず、これを受け取れていない状況です。

相手方から養育費を受けるためには、離婚時にきちんと養育費に関する取り決めを行っていた方がよいのは当然の前提ですが、それでもなお受給水準が低いことは、上の表から明らかです。

2 相手方から養育費が支払われないときの対処法

養育費の支払いが滞ったときの対処法は、どのような方法で養育費の取り決めを行ったかによって、変わってきます。取り決めの方法がしっかりしていればいるほど、不払い時の制度保障もしっかりしたものになっていきます。

 ⑴ 任意交渉(話し合い)

当事者同士が直接、あるいは代理人等を通して、今後の養育費をきちんと支払ってもらえるよう話し合いを行う方法です。

ただし、任意交渉によって相手方に支払を強制することはできませんし、そもそも、相手方に対し、任意交渉に応じるよう強制すること自体もできません。

口約束・念書しかとっておらず、かつ、任意交渉もうまくいかなかった場合であっても、改めて、家庭裁判所に養育費請求の調停の申立てをし、養育費の支払いの取り決めを再度行うことは可能です。

 ⑵ 履行勧告

家庭裁判所が、養育費の支払い状況について調査をしたうえで、正当な理由もないのに支払っていない場合には、相手方に対し、「約束どおり履行しなさい」という勧告を電話や手紙で行う方法です。
無料で、家庭裁判所に申し立てることができます。

ただし、あくまで自発的に支払いを促すものにすぎず、強制力はありません。

⑶ 履行命令

家庭裁判所が、一定の期限を定めて、養育費を支払うように命令する方法で、正当な理由無く履行命令に従わない場合、相手方は10万円以下の過料に処せられることになります。

ただし、強制執行とは異なり、相手方に「支払わなければ過料になるかもしれな  い」というプレッシャーをかけるにすぎず、養育費の支払いそのものを強制するこ  とはできません。

⑷ 強制執行

強制的に相手方の財産を差し押さえ、養育費の支払いを実行させる方法です。差し押さえられる財産としては、ケースバイケースですが、相手方の持っている不動産、動産、給与、預貯金などがあります。

3 離婚時にどのような取り決め方をしておくかがポイント

繰り返しになりますが、取り決めの方法がしっかりしていればいるほど、不払い時の制度保障もしっかりしたものになっていきます。

「強制執行も行えるようにしておきたい」という場合は、公正証書や調停調書を取っておく必要があります。

このように、後々の手続のために、離婚時、あるいは離婚前から準備しておかなければならないことは多く、しかも複雑な手続が必要な場合もありますので、なるべく早い段階から弁護士に相談しておかれると安心です。ご相談にいらした方のご意向に沿う形で、どのような準備・対処法があり得るかをアドバイスできるかと思います。

著者プロフィール

井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属

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