【動画で解説】裁判上の離婚と離婚届の関係

今回は、裁判上の離婚と、離婚届の関係について、お話したいと思います。

ご存じのとおり、離婚をするためには、ご夫婦お2人で話し合い、離婚届を提出する協議離婚と、
話合いがまとまらない場合に裁判所で手続を進める裁判上の離婚とがあります。
さらに、裁判上の離婚の中には、段階的に、①調停離婚、②審判離婚、③裁判離婚の3つがあります。
手続の違いや離婚事由の詳細は、弊所のHPをご覧ください。

1 裁判上の離婚でも、離婚届の提出は必要?

ドラマなどでは、夫婦2人が離婚する際、家の中で一緒に、あるいは郵送で送り合って、それぞれ離婚届にサインをし、印鑑をついた上で、どちらかが提出しているシーンが出てきます。
あれは協議離婚にあたるのですが、協議離婚の場合は、離婚届を役所に提出し、受理された時点で、初めて離婚の効力が生じます。

これに対して、裁判上の離婚は、離婚の裁判が確定したときに、離婚が成立します。
「離婚の裁判が確定したとき」とは、具体的には、下記のとおりです。手続ごとに、違いがあります。
・調停離婚:調停成立時(調停成立による調停調書の作成時)
・審判離婚:調停に代わる審判の確定時
・裁判離婚…・和解離婚:和解成立時(離婚訴訟における和解調書の作成時)
・判決離婚:認容判決の確定時

そうすると、裁判上の手続で離婚が成立するなら、離婚届は出さなくてよいのでしょうか?
――実は、そうではありません。
裁判手続を経て離婚が成立した場合であっても、離婚届を役所に提出する義務があります。その理由は、戸籍を正確に保つためです。
ただし、この場合の離婚届は報告的な手続になるため、元夫婦2人のうち一方のサインと押印だけで足り、もう一方のサイン・押印は必要ありません。(※ただし、相手方に関する記載欄は、届出義務者が記載しなければなりません。)

2 届出方法

(1) 誰が――届出義務者

戸籍法上、裁判上の離婚手続の申立てをした方が、届出義務者となります。
ただし、夫側が申立人の場合は、夫による届出だけでは妻の新しい戸籍編成ができないという不都合があるので、実務では、妻側を届出義務者とする措置が採られる場合があります。

(2) いつ――届出期間

実は意外に短く、裁判が確定した日から10日以内に届出をしなければなりません。

(3) どこへ

管轄の市町村役場へ

(4) 併せて必要なもの

「裁判の謄本」・・たとえば、調停調書や、和解調書の謄本のことです。
審判と判決の場合には、審判書・判決書の謄本のほか、確定証明書が必要となります。
そのほか、戸籍謄本が必要な場合もありますので、あらかじめ役所に問い合わせてから行くとよいかと思います。

3 届出しない場合の措置

正当な理由がなく期間内に届出しない場合は、5万円以下の過料制裁を受ける可能性があります。
また、届出義務者ではない相手方当事者も、届出ができるようになります。

4 おわりに

以上のとおり、裁判上の手続が終わり、離婚が成立しても、実は、やらなければならない手続が待っています。しかも、その頃には、どんな手続をいつ・どのようにしなければならないのか、調べる気力や時間も惜しいほどに疲弊している場合もあります。
そのような場合も、弁護士がサポートさせていただきますので、是非お気軽にご相談ください。

著者プロフィール

井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属