新設!法定養育費って?~令和8年4月1日 家族法改正で何が変わる?
1 はじめに
今回は、家族法改正で新しくできた【法定養育費】の制度について解説します。
これまで、離婚のときに養育費を決めないまま別れてしまうケースがありました。
従来の法律では、相手方からきちんと養育費を受けるために、例えば調停を申し立てて、資料を出し合って、金額について協議しなければなりませんでした。
今回の改正では、その空白期間を埋める制度として、「法定養育費」が新設されました。
2 法定養育費とは?
まず、制度の概要です。
今回新設された民法766条の3第1項は、要約すると、
父母が子の監護費用の分担を決めないまま協議離婚した場合、
離婚の日から、一定の終期まで、法定養育費を請求できる
と定められています。
ポイントは3つです。
①協議で養育費を決めていないこと
「父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく」離婚した場合に発生します 。
つまり、養育費を決めていない場合だけ発生します。
養育費を決めている場合は、その取り決め通りの養育費が発生することになるので、法定養育費は発生しません。(支払側において、二重に負担することにはなりません。)
② 誰が請求できる?
権利者は、「離婚の時から引き続き、子の監護を主として行う父母の一方 」です。
ここでいう「監護」とは、実際に子どもの世話をしているという事実上の概念です。
親権や監護権がどちらに帰属しているか、ではなく、現実に主に育てている側が請求できます。
③あくまで暫定的・補充的な制度であること
法定養育費は、あくまで暫定的・補充的なものです。
つまり、きちんと協議や審判で養育費を決めるまでの一時的な制度という位置づけになります。
3 適用対象は?
この法改正と、法定養育費の仕組みは、改正法の施行後、つまり令和8年4月1日以降に離婚したケースのみに適用されます。
改正法施行前に離婚が成立している場合には、養育費の支払を求めるためには、従来通り、父母の協議や家庭裁判所の手続によって養育費の額を取り決める必要があります。
4 いつからいつまで発生する?
◆始まり(始期)
法定養育費は、「離婚の日」から発生します。
なお、初月は、日割計算となります。
例えば、4月10日に離婚した、ということであれば、「月額÷30日×20日」分の法定養育費が発生することになります。
◆終わり(終期)
終期は、次のいずれか早い日までです 。
・父母が協議で養育費を決めた日(調停成立日も含む。)
・養育費についての審判が確定した日
・子が18歳に達した日
基本的に、正式に養育費が決まれば終了することになります。
◆支払日は?
支払日は、毎月末日と定められています。
5 金額は?
法定養育費の額は、未成年の子1人につき月2万円 と定められています。
お子さんが2人なら、月 4万円という計算です。
これは、「最低限度の生活の維持に要する標準的な費用」 とされています。
ポイントは、父母の収入に関係なく定額であるという点です。
6 どうしても支払えないときは?
では、本当に払えない場合はどうなるのでしょうか?
民法766条の3第1項ただし書には、要約すると
「支払能力を欠く場合は、全部または一部の支払を拒むことができる。」と記載されています。
つまり、支払う側が、その時点で、
・支払能力を欠くこと
または
・支払うと生活が著しく窮迫すること
を立証できれば、全部または一部の支払を拒むことができます。
ただし、これは、支払を受ける側の権利そのものを消し去るものではなく、権利の行使を止める制度と説明されています。
7 先取特権がついた!
今回の改正の大きなポイントが、一般先取特権の付与です。
民法308条の2により、養育費(法定養育費を含む。)に一般先取特権が付与されることになりました。
⑴ 先取特権って何?
簡単に言うと、「他の債権より優先して回収できる権利」です。
従来は、調停や審判、公正証書がなければ、養育費について強制執行を行うことができませんでしたが、今回、先取特権が付与されったことで、これらが無くても、担保権実行手続を取って、優先的に回収することが可能になるという、とても強力な仕組みです。
このように、養育費に先取特権が付与された趣旨は、
養育費が、未成熟の子の健全な成長を支える重要な債権であり、これを保護する必要性が高いことにあります。
⑵ 先取特権の対象額
先取特権が付く額は、子ども1人につき月8万円までです。
法定養育費の場合は月2万円全額が、先取特権の対象となります。
また、協議や審判によって養育費が定められた場合は、月8万円まで、先取特権によって保障されることになります。
8 おわりに
以上、【法定養育費】の制度について解説しました。
今回のポイントを整理すると、以下のとおりです。
✔ 令和8年4月1日以降に離婚する父母を対象に
✔ 養育費を決めないまま離婚した場合でも
✔ 子1人あたり月2万円が自動的に発生
✔ 離婚日からスタート
✔ あくまで空白期間を埋めるための暫定的制度
✔ 18歳または養育費確定まで
✔ 支払えない場合は裁判所で調整可能
✔ 先取特権付きで強化された
繰り返しになりますが、法定養育費の制度は、令和8年4月1日の改正法施行後に離婚が成立した方に適用されることになります。
養育費について取り決めができていない、取り決めているけれども支払われていなくてお困りの方、ぜひ1度お近くの弁護士にご相談いただければと思います。
適用される法律をふまえ、その方に最も合った方針を立てながら、伴走できるかと思います。
著者プロフィール

おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属

















