養育費の重要性と新制度のポイント~法改正でどう変わる?

1. はじめに

皆様、こんにちは。弁護士の堤です。 本日は「養育費」にまつわる法改正をテーマにお話しさせていただきます。
養育費は、子どもが健やかに生活し、成長・自立していくためのとても大切な資源です。しかし、残念ながら日本では、離婚後に養育費が途絶えてしまうケースが少なくありません。
こうした現状を打破するため、現在、大きな法改正が行われようとしています。今日は、養育費に纏わる法改正のポイントを説明いたします。

2. 養育費を取りまく現状

まず、養育費を取り巻く現状ですが、厚生労働省の令和3年度の調査によると、離婚した母子世帯のうち、現在も継続して養育費を受け取れているのはおよそ28%、父子世帯では8.7%程度に過ぎません。
なぜ、これほどまでに養育費の支払が滞ってしまうのでしょうか。
それは、
• 相手と関わりたくないという「あきらめ」
• 支払う側の「責任感の欠如」
• 督促する手間の「煩雑さ」
これらが大きな壁となっていました。
しかし、今回の法改正ではこの「不払い」を許さない仕組みを強化しています。

しかし、今回の法改正ではこの「不払い」を許さない仕組みを強化しています。

3. 法改正の最重要ポイント

2024年(令和6年)5月に成立した改正民法では、養育費に関して主に3つの画期的な変更がありました。

① 「法定養育費」制度の新設

これまでは、離婚時に養育費の取り決めをしていなければならず、当人同士での話し合いが難しければ、調停等の裁判手続を踏む必要があり、実際に支払が始まるまでに時間がかかっていました。
そこで、今回の改正により、法定養育費制度が導入されました。

具体的には、
・2026年4月1日以降に離婚した場合、法律上の最低基準として子一人につき月額2万円
離婚日から発生。
・離婚時に合意がない場合でも請求できる最低額
・法定養育費は、あくまでも養育費の取り決めをするまでの暫定的・補充的なもの。今後も、正式な金額は、当事者間の協議や裁判所の手続により、それぞれの収入や個別事情を踏まえ、適正額を決めていくことになる。

② 養育費への「先取特権」の付与

これまでは、相手が支払わない場合に給料を差し押さえるには、裁判所の調停調書や審判書、公正証書などの債務名義が必要でした。

しかし、今回の改正により、養育費には「先取特権」と呼ばれる優先権が付与され、債務名義がなくても、養育費の取り決めの際に当事者間で作成した文書に基づいて、差押手続ができるようになります。先取特権が付与される養育費の額は、子ども一人につき月額8万円です。
これにより、公正証書などがなくても、より簡易・迅速に差し押さえの手続きに入れる道が開かれます。

③ 離婚後共同親権との関連

ニュースで話題の「共同親権」も、養育費と密接に関わっています。共同親権になっても、当然ながら養育費の支払い義務は消えません。むしろ、双方が親としての責任を継続して果たすことが、より強く求められる時代になります。

4. 適切な金額を決めるために

よく「いくら払えば(もらえば)いいのか」と相談を受けます。 実務では、双方の収入や子の人数・年齢等に基づき、「標準算定方式」を基準に算定します。もっとも、
• 私立学校への進学
• 持病の治療費
• 習い事の費用
等、個別事情をどう反映させていくかの協議は不可欠です。

5. おわりに

養育費の不払いは、子どもの将来の選択肢を奪うことと同義です。
この法改正の基本理念は、「子どもの利益の最大化」です。親の事情や紛争の有無にかかわらず、子どもが適切な生活と教育を受けられる環境を法制度として支えることが、今回の改正の核心です。
今後の運用で課題も出てくるでしょうが、今回の改正を契機に、子と養育者が健全に生活できるよう、努めていきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。