公務員の離婚について

公務員は、一般的に地位が安定している点に特徴があります。離婚しようとする当事者の一方(または双方)が公務員である場合、注意しなければならない特有の問題があります。

1 公務員が支給される金銭の種類

⑴ 共済貯金

公務員だけが利用できる貯蓄制度です。
各共済組合は、組合員である公務員から貯金を受け入れ、これを組合で運用し、組合員に還元するという貯金事業を行っています。
組合にもよりますが、利率はだいたい0.5%~2%。これは、民間のメガバンク(利率は凡そ0.001%)の1000~2000倍もする高利率ですので、利用されている方は多いのが実情です。

⑵ 退職金

お勤め先や職種にもよりますが、公務員には、平均2000万円前後の退職金が支給されることになろうかと思います。
公務員の場合、行政機関が倒産することはまずあり得ませんから、支給する側の都合で退職金が不払いになるケースはほとんどありません。この事は、後ほどご紹介する通り、財産分与の際にも大きな影響を与えます。

⑶ 年金

公務員も会社員と同様に、国民年金と厚生年金保険の各制度による年金を将来受給することになります。
(※かつて公務員は、共済組合の組合員として共済年金を受給していましたが、平成27年10月に共済年金制度が廃止されて以降は、厚生年金保険制度に加入することとなり、被用者の年金は厚生年金保険制度に統一されました。)

☆詳細は「年金分割」をご覧ください。

2 財産分与

⑴ 財産分与とは

財産分与とは、夫婦の婚姻中に二人で築き上げた財産を、離婚時に折半することです(詳細については、「財産分与」をご覧ください。)。
先ほどご説明した公務員が将来受け取る①共済貯金、②退職金は、一般的にそれぞれ財産分与の対象となる財産に含まれます。

⑵ 将来の退職金

退職金は、労働賃金の後払い的な性格をもっているので、将来受給予定であっても、夫婦が婚姻中に協力して形成した共有財産といえる範囲内のものであれば、財産分与の対象財産になります。

公務員の場合は、支給する側の都合で退職金が不払いになるケースはほとんどなく、将来ほぼ間違いなく給付される上、その額も民間企業に比べて算定しやすい点に特徴があります。
なぜなら、公務員の退職金の給付方法や算定方法は、法律や条例によって定められているからです。
(※たとえば福岡市職員の場合、地方自治法第204条第2項、福岡市職員退職手当支給条例などが退職金の根拠法規となります。)

3 【重要】熟年離婚の注意点…間に合わなくなる前に

⑴ 問題点

熟年離婚という言葉がすっかり社会に浸透した昨今。50代、60代以降の夫婦の離婚は、今も増え続けています。
これまでご紹介してきたとおり、公務員は、多額の退職金等を受給することとなりますが、熟年離婚を検討されている方の場合、これらの金銭が既に支給され始めているという点が、非常に危ういのです。
どういうことかというと、財産分与というのは、夫婦間の財産を離婚時に折半するものですから、離婚時や別居時に現存する財産や、将来支給される可能性の高い財産のみが分与の対象となるわけです。そのため、たとえば、公務員を退職されたお相手が、受け取った退職金や厚生年金を離婚前に全て使い切ってしまった場合、数千万円という金銭そのものは財産分与の対象から外れてしまうからです

⑵ 対策

このような事態を防ぐためには、熟年離婚を検討している場合、お相手の預貯金や退職金請求権自体について仮差押えを行うなど、法的な手続を執ることが極めて重要になるケースがあります(詳細は、「財産の確保(保全)について」をご覧ください。)。
ただし、この手続を行うには、何よりもスピードが大切です。ご相談にお越しになった時にはもう手遅れとなっていた…という場合も少なくありません。

4 弁護士にご相談ください

離婚の際は、このように考えなければならないことがたくさんある上、その内容や揃えるべき資料も、事案によって変わってきます。
今あるお悩みに集中していただくためにも、複雑な法的手続は弁護士にお任せいただけたらと思います。
弁護士は社会の医者です。離婚自体を迷っていても構いません。将来の選択肢をできるだけ多く用意するためにも、まずはぜひご相談にいらしてください。

【動画でご説明】公務員の離婚について

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