協議離婚は、夫婦2人がきちんと話合いを行い、合意に至った段階で、離婚届を作成して提出する、というのが本来の在り方です。

ところが、夫婦の一方が、相手方の名前でサイン・押印をして1人で離婚届を作成し、勝手に役所へ提出してしまうケースがあります。

1 離婚の効果

離婚は、夫婦2人の離婚意思があって初めて成立するので、法律上、このようなケースでは離婚の効果は生じません。

2 戸籍上の効果

しかし、役所は、離婚届が提出された際、夫婦に本当に離婚意思があるのか、チェックすることができません。離婚届の形式さえ正しければ、これを受理しなければならないのです。
そのため、戸籍上は、夫婦が離婚したことになってしまいます。

このような戸籍を元に戻すには、離婚無効の調停や訴訟を起こす必要があります。
そうなってくると、時間も労力もかかるので、一方的に離婚届を出されてしまった側にとっては、とても面倒なことになります。

3 離婚届の不受理申出

このような不利益を回避するため、「離婚届の不受理申出」という制度があります。
不受理申出を行うことで、自分の知らないうちに、相手が離婚届を出そうとしても、役所はこれを受理しなくなります。簡単に言うと、離婚届の一方的提出にブロックをかけられることになるのです。

⑴ 申出方法

 ア 入手方法

近くの役場へ行けば、どなたでも離婚届の不受理申出書を入手することができます。
最近では、ホームページに申出書の書式のダウンロードページを設けている役場もあります。

 イ 提出方法

お近くの市町村役場へ行って提出しましょう。

 ウ 留意点

全国どこの役場から提出しても、夫婦の本籍地の役場に転送された段階で、効力が生じます。
その転送中、つまり、提出から効力発生の間には、若干のタイムラグが生じますので、その間に離婚届が提出されてしまうと、どうしようもありません。
一刻の猶予もないような空気感の場合は、早めに不受理申出書を提出しましょう。

⑵ 有効期間

かつて、申出の有効期間は、役場で受理されてから最長6か月までという期間制限がありました。
ところが、法改正の結果、平成20年5月1日以降は、この申出期間の制限がなくなりました。つまり申出の取下げがあるまで、無期限で、離婚届不受理の効力が発生します。
ただし、離婚届不受理申出をした側が離婚届を提出する場合は、不受理の申出に取下げがあったものとみなされ、離婚届が受理される取扱いとなっています。

⑶ 取下げ方法

離婚届不受理の申出の効力を消滅させるためには、申出書を提出した役場へ行き、取下げ申請の手続をする必要があります。

著者プロフィール

井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属

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